引用元:https://kako.2ch.net/test/read.cgi/news4viptasu/1363799229/
ハッピーエンドでオナシャス
RPGの主人公に真剣に考えて名前つけてそう
その日は休日だったけどサッカー部の練習もなく、家の中で何をするでもなく下はジャージに上はTシャツっていう部屋着姿でいたんだ。
両親は共働きだし、兄貴の健太は朝からどっかに出掛けてて俺は一人でテレビ見ながらご飯食ってた。
普段居留守使う俺だったが、その日は母親が宅急便来るから居留守使うなってメモを置いていた。
しょうがなく印鑑持って玄関の扉を開けると、そこには段ボールの代わりにコージーコーナーの箱を持った女が立っていた。
女「はじめまして!健太から聞いてるかな?」
俺「えっ?」
女「あれ?聞いてない?今日、健太の家に遊びに行くって言ってあったんだけど…涼太くんだよね?」
この時、俺は直ぐに目の前の女が兄貴の彼女だと気づいた。高校生になっても俺と同じサッカーをやっていた兄貴から、彼女なんて浮ついた話を聞いたことはなかったので驚いた。
女「えー!ちゃんとメールしてあったんだけどな。どうしたんだろう?とりあえず、健太とお付き合いさせていただいてます。歩美です。」
見るからに年下だし、部屋着姿の俺へ深々と頭を下げた歩美。頭を上げた際に笑顔で手渡してきたコージーコーナーのケーキ。
俺はそれを「ありがとうございます」とか余裕ぶって貰ったけど、実際はその笑顔に見惚れてしまった。
そんな歩美と俺は玄関で二人どうすればいいのか分からず、無言になってしまった。
兄貴がいないのに家に入れられないし、かといってケーキだけ貰って帰すのも悪い。
俺「あのー。兄貴に電話かメールしてみたらどうですか?」
歩美「あっ、そうだね!」
同じように気まずそうにしていた歩美が鞄から携帯を取り出そうとあたふたしていると、その背後から兄貴が走ってくるのが見えた。
俺はそれを見たときに、付き合ってるんだから自分の彼氏の好きなもの知ってて当たり前だよな。って、思ったのと同時に羨ましく感じた。
歩美「家族の人数分しかないから、私はいらないよ!」
健太「大丈夫、父親出張で明後日帰ってくるから食べちゃえよ」
歩美「じゃあ、私もいただくね」
それだけの会話だったが、兄貴が俺の知ってる兄貴じゃなかった。なんていうか男らしいんだよ。大切にしてるってのが凄い伝わってきた。
健太「改めて、こいつが俺の弟の涼太。中学二年生でサッカーやってるんだ」
歩美「さっきも言ったけど、歩美です。宜しくね」
俺「あっ、宜しくお願いします」
本当は目の前の歩美を可愛いとか思ってるくせに、それがバレないようになんとかポーカーフェイスを決めていた。
兄貴「ケーキくれたのが歩美で、俺の彼女。一応1年の頃から付き合ってるんだ」
別に兄貴の恋愛をすべて知ってるわけじゃないが、中学時代から兄貴はモテた。同級生の女子も、「涼太くんのお兄さんかっこいいよね」とか言ってきたし。
兄貴は告白してきた子が可愛ければ付き合うような、女関係が適当な印象があった。だからこそ、今回連れてきた歩美を大事にしているのも本気なのも分かった。
その日は俺が二階の自室に篭り、兄貴達はずっとリビングにいた。夕方帰ったらしいが、俺は部屋で寝ていて知らなかった。
これが、俺と歩美の出会い。なんの捻りもないしただ兄貴が彼女連れてきて弟に紹介しただけっていうものだった。
それでもこの一回で、俺は歩美の無邪気な笑顔を好きになってしまった。
他の兄弟は知らないが、俺と兄貴は二人ともサッカーやってたこともあってか仲が良い。
それに本人には絶対言わないが、同じポジションでサッカーが上手い兄貴を尊敬していた。また、同時に劣等感というか兄貴がコンプレックスでもあった。
勉強も運動も出来て、顔も良ければ愛想も良い。そんな兄貴を持ったせいで、中学の先生にはよく兄貴の話を聞かされていた。
比べられるたびにムカついて、それでも心のどこかで兄貴には勝てないからしょうがないと諦めていた。
その時連れてきたのが歩美。俺は、どうしても完璧な兄貴から何か一つ奪ってやりたいと思ってしまったのだ。
明日見るからがんばれ
こういうとき男の子供持つ母親って凄いと思うんだが、俺がキレて怒鳴っても怖がることもなければ完全にシカト。
「はいはい。涼太が悪いんでしょー」って見事に俺の厨二病っぽい言い訳と屁理屈は流された。
母親「分かったから、この話は後で。お皿五枚持ってきて!」
俺「はっ?うちっていつから五人家族になったんだよ」
母親「あれ?今日は歩美ちゃん来るんだけど、ホワイトボード見てないの?」
そう言われて急いでリビングのテレビ横に置かれたホワイトボードを見る。そこには、「歩美ちゃん夕飯」と母親の字で書かれていた。
俺は中学生だし別に用もないので見ないし使ってないが、兄貴は部活の遠征だったり弁当の有無だったりを律儀に母親のために書き込んでいる。
この時ほどホワイトボードを見なかったことを後悔したことはないね。朝から知ってたら、一日のテンションとやる気は倍くらい変わっていた。
母親にバレない程度に急いで洗面所行くと、顔洗って髪の毛を軽くセットした。俺なりに最初の部屋着にボサボサヘアーの印象を良くしたかったのだ。
兄ちゃん頑張れ
俺「いや、あっ…はい」
何か上手いこと返したいし、会話を繋げたいのにテンパって言葉が出ない。するとなぜか母親が「私服」という歩美の言葉に反応した。
母親「そうなの、歩美ちゃん。聞いてよ、この子ったら私服で遊びに行くかジャージでサッカーするかで、勉強しないのよ!」
歩美「えっ、そうなんですか?」
俺「おい、ふざけんな。やめろ!」
母親「中間テストの結果、ベッドの下に隠してたの見つけたの!もうね、健太を見習って勉強してほしい」
最悪だった。本当に。なんでここでその話を出すんだよ!って、思いっきり母親を睨みつけた。
しかもちゃっかり自分の息子1人を生贄にしてもう1人の息子の株を上げやがった。すでに歩美は兄貴のものであるが、俺だって歩美に少しでも見てもらいたい。
それを台無しにして涼太くんはバカって印象を植え付けようとする母親を俺は一生許さない。と、心に誓った時だった。