のび太「ドラえもんが消えて、もう10年か」

ネタ

引用元:https://hayabusa.open2ch.net/test/read.cgi/news4vip/1407666476/

思わず、曇り空に向かって呟いてしまった。

高校を卒業した後、僕は大学には行かなかった。確か、ドラえもんは僕が1浪して大学に行くと言ってたけど、大学は到底無理だった。
今僕が働いているのは、しがない中小企業だ。これも、ドラえもんが言っていたのとは違う。就職活動に失敗することもなく、起業することもなく、高校卒業した後に、いとも普通に就職をした。

……まあ、これが人生なのかもしれない。ちょっとしたことで、未来は変わるのかもしれない。

未来ってのは、なんとも脆いものなんだろうな。

この記事への反応
なんか始まった
いいね
会社での生活は、学校の時と何一つ変わらない。
毎日上司に怒られて、落ち込んで……

――だけど、あの頃と違うものもある。

ローカル線沿いにある小さな古いアパートが、今の僕の家だ。
実家から通うことも出来たけど、父さんも母さんももう歳だ。僕が独り立ちすれば少しは安心するだろうし、穏やかな老後を過ごすことが出来るだろう。

薄暗い部屋の電気を付ければ、1Kの小さな部屋に明かりが灯される。
部屋には必要最低限のものしかない。テレビ、冷蔵庫、コンロ、電子レンジ……
寂しい部屋ではあるが、これが、僕の住まいだ。

突然家にワープしててビビった
誰もいない部屋の隅に鞄を置き、スーツのままボロボロの畳に寝転がった。
もう見慣れた天井。相変わらず染みだらけだ。スーツもずっと着続けているからか、ところどころ色落ちしている。

「………」

――ふと、部屋の片隅にある事務机に目をやった。
机の上には仕事のために買ったノートパソコンと、仕事で使う資料が置かれている。マンガはない。
布団から立ち上がり、机に歩み寄る。そして、しばらく机を見つめた後、静かに引き出しを開けてみた。

――当然だけど、引き出しの中には、何もなかった。

むなしい
泣ける
次の休みの日、久しぶりに、僕らは集まった。

「――ホント、久しぶりだな!!」

ジャイアンは、相変わらず豪快に笑う。
彼は今、企業の社長をしている。高校を卒業した後、彼は一度就職した。だが、そこはかなりのブラック企業だったらしく、部下を何とも思わない心無い上司に激怒し、半ばケンカ別れのように辞職した。そして、自分で会社を立ち上げたんだ。
会社は好調のようだ。それは偏に、彼の人柄のおかげだろう。部下を大切にし、得意先に社長自ら赴き交渉する。引く時には引き、行くときには行く。彼のいい部分が、全面的に作用しているようだ。

「ジャイアン、相変わらず声が大きいなぁ……」

スネ夫は苦笑いをしながら、ビールをちびちび飲んでいた。
彼は今、デザイナーを目指している。なんでも、その道で有名な人に頼み込んで、弟子入りをしたとか。
彼は父親の会社を継がなかった。両親とはかなり口論となったようだが、父の会社を振り切り、自らの道を切り開いたんだ。今では、両親も彼を応援している。だが彼は、両親の支援を一切受けていない。『夢は自分の力だけで叶えたい』……それが、彼の言葉だった。

「二人とも、本当に立派になったよな……」

笑ながら話す二人を見ていて、言葉が漏れていた。

「よせやいのび太。そんなんじゃねえよ」

「そうそう。お前だって、ちゃんと働いてるじゃないか」

「……僕は、ただそれだけだよ。何かをしようとしているわけでもない。ただスーツに着替えて、会社に行って、怒られてるだけだ……」

「……そんなに卑屈になるなよ。働いてるってのは、大人になったってことなんだよ」

「そ、それより、今日はしずかちゃんは来ないの?」

スネ夫は慌てながら話題を逸らした。気を、遣わせてしまったかもしれない。

「……しずかちゃんは、今日は仕事だよ」

「そっか……残念だな」

「しょうがないよ。しずかちゃんは、大手の企業に勤めているからね。――出木杉と一緒に……」

「………」

それから、僕らは夜遅くまで宴会をして別れた。

二人とも、立派に自分の道を歩いている。……片や、僕はどうだろう……

(……僕は、ダメだな……)

考えれば考える程、鬱な気持ちになってくる。もしドラえもんがいたのなら、助けてくれたかもしれない。
……でも、彼はもういない。そして、いくら考えても、何か現状が変わるわけでもない。

(……帰るかな……)

考えるのを止めた僕は、夜道を再び歩き出した。空を見上げてみたけど、あいにく星は見えなかった。雲に隠れた朧月だけが、逃げるように光を放っていた。

「――もう、のび太くんは本当にいっつも怒られてるよね」

「う、うん……ごめん……」

「なんで私に謝るのよ。だいたいのび太くんはね、ちょっと気が弱すぎるよ?もうちょっと男らしくしてみたら?」

咲子さんは、ちょっと気が強い。こうやって毎回慰めてくれてはいるが……けっこう、言葉がキツイ。

「……ってことで、ちょっと言ってみて!!」

「……え?え?」

「もしかして、聞いてなかった?」

「ああ……ご、ごめん……」

「はあ……もういいわ。――はい、じゃあ私の言葉に続いて!」

「う、うん!」

「――今度!」

「こ、今度!」

「お礼に!」

「お礼に!」

「食事でも!」

「食事でも!」

「行きませんか?」

「行きませんか?」

「――ええいいわ!行きましょ!」

「………へ?」

ほう…
次の休日、僕はなぜか咲子さんと街を歩いていた。

……そう言えば、紹介が遅れていた。
花賀咲子さんは、僕の仕事場の同僚だ。小学生の時にドラえもんが道具の“ガールフレンド・カタログ”で見たことがあった。……もっとも、それを思い出したのは、ごく最近だが。
咲子さんは、職場では人気者だ。仕事が出来て、明るくて、世話好き。彼女がいるところからは、いつもみんなの笑い声が聞こえてきていた。
僕は、咲子さんとは同期になる。同じ時期に入社したのだが、全然ダメな僕とは全然違う。
正直に言えば、少しだけ、嫉妬してしまってる。

「――それでのび太くん。今から、どこに連れてってくれるの?」

「え、ええ?僕が決めるの?」

「当然でしょ。男なんだし」

「……それは偏見だよ……」

「いいから!ほら、さっさと決めて!」

無茶振りされても困る。こうやって女の人と出かけたことなんて、しずかちゃんぐらいしかないのに……
でも、咲子さんは何かを期待するように僕を見ていた。何か決めないと、またどやされる。

「……じゃあ……え、映画…とか?」

「う~ん……ちょっとベタすぎるけど……まあ合格ね。――さ!行きましょ!」

僕の前で一度クルリと回った咲子さんは、そのまま歩き出した。しかたなく、僕もそれに続くのだった。

「」

「――面白かったね!!」

「う、うん……」

映画館を出た後、咲子さんは上機嫌だった。よほど気に入ったようだ。
映画は、咲子さんが選んだ。というより、僕は何もしていない。映画館に着くなり、咲子さんは有無を言わさずその映画のチケットを購入したからだ。
咲子さんが選んだ映画は、外国の恋愛ものだった。まあ、よくあるパターンの映画だから、内容は割愛しよう。
ただ、僕としては少し退屈なものだった。もちろん、それは彼女には言わないけど。だって彼女はこんなに上機嫌なんだ。それにわざわざ水を差すこともないだろう。

「ねえねえ!次、どこ行こっか!」

「つ、次?ええと……」

「もう……女の子とデートするんだよ?デートプランくらい立ててよね」

「で、デート!?」

「何驚いてるのよ。当然じゃない」

「ま、まあそうなんだけど……」

……全然、そんな自覚なかった。昼過ぎに集まるように言われてたから、晩御飯まで時間つぶしのために映画を選んだんだけど……これは、デートだったのか……

「まあいいわ。じゃ、ついて来て」

「え?で、でも……」

「いいからいいから!ほら!」

咲子さんは、僕の腕を引っ張り始めた。人通りの多い道路を、僕らは歩く。すれ違う人は不思議に思うかもしれないな。笑顔で男を連れまわす女性と、腕を引っ張りまわされる男。

(完全に、立場が逆だな……)

そうは思いつつも、なされるがままになるしかなかった。

なんかのび太って、映画とかだと、
動く的に、乗り物に乗りながらでも、
正確に当てられるみたいだったねぇ。
「本当に久しぶりだね。今日はどうしたの?」

「……ちょっと職場の買い物。のび太さんは?」

「……僕も、買い物だよ」

「………」

「………」

沈黙が、僕達を包んでいた。
本当は色々と話したいことがあった。ジャイアンのこと。スネ夫のこと。僕のこと。そして聞きたかった。しずかちゃんのことを……
だけど、こうして思いがけず会うと、なぜか言葉たちが引っ込んでしまっていた。
それでも、言葉こそないが、とても懐かしい雰囲気だった。とても心地よい、あったかい雰囲気だった。

ただ、いつまでもこうして黙っておくわけにもいかなかった。

「……しずかちゃん、仕事忙しそうだね」

「う、うん……休みがほとんどないわ」

「そっか……大変だね」

「うん。でも、とても充実してるわ」

「そっか……。――あ、でも、体には気をつけてよ?忙しい時こそ、体調を壊しやすいんだし」

「そのあたりは大丈夫よ。相変わらず心配性ね、のび太さん。フフフ」

「しずかちゃんこそ。相変わらずだね。フフフ」

「………」

「………」

……再び、沈黙が訪れた。

流れる沈黙の中で、必死に自分を奮い立たせていた。今しかない。今しか、チャンスはない……
震える唇を噛み締めて、ようやく、声を絞り出した。

「……ええと、しずかちゃん」

「……なぁに?」

「こ、今度、二人でご飯でも―――」

「――ごめんしずか!資料がなかなか見つからなくて!待たせてしまっ―――」

「―――」

……あと少しのとこまで来ていた言葉は、再び喉の奥へと逃げていった。いや、正確には、飲み込んでしまった。
しずかちゃんの元に駆けよって来た、その人物を見たせいで―――

「……で、出木杉……」

「……野比、くん……」

「で、出木杉さん……」

「………」

三人とも、言葉を失ってしまった。まるで石になったかのように、全員動けずにいた。
――そんな僕らに向かって、更に声がかかった。

「――のび太くんお待たせ!自動販売機が思ったより遠く…て……」

「……さ、咲子さん……」

「………」

その場に固まるのが、4人に増えてしまった。

「……やあ野比くん。久しぶりだね」

沈黙の中、一番最初に口を開いたのは出木杉だった。

「あ、ああ。久しぶりだね……」

「今日は、出木杉さんと職場の備品を買いにきてたのよ……ね?出木杉さん?」

「そうなんだ。しずかと、二人きりで、ね……」

「………」

久々に会った出木杉は、しずかちゃんを呼び捨てにしていた。そして、二人で出かけていたことを、やけに強調させる。
今の彼は、以前会った時とは全く違う。――まるで、僕に対して、威嚇をするようだった。

「……ところでのび太さん。その人は?」

しずかちゃんは僕の背後に立つ咲子さんに視線を向けた。

「あ、ああ。この子は……」

「―――ッ」

そう言いかけたところで、咲子さんは僕の前に出た。そして、しずかちゃんの正面に立ち、少し速めに一度だけ会釈をした。

「……初めまして。私、花賀咲子といいます。のび太くんとは、職場の同僚です」

「え、ええ……はじめまして。源しずかです。よろしく」

「……出木杉です。花賀さんは、野比くんとお出かけかな?」

「ええそうですよ。今日は、二人で出かけてるんです。」

「………」

「のび太くん。もう行こ」

「え?――あ、ちょ、ちょっと――」

咲子さんは、僕の手を強引に掴み、ツカツカとその場を離れはじめた。慌ててしずかちゃんの方を見る。しずかちゃんは、一度僕に視線を送り、そのまま出木杉と歩いて行った……

「………」

「……さ、咲子さん……?」

「………」

「……ね、ねえ……」

「………」

(……まいったな……)

さっきから、ずっとこの調子だ。
それまでの上機嫌とは打って変わって、とにかく不機嫌になっている。こうやって僕の前をただ歩き。一言も口にしない。
本当はしずかちゃんが気になったけど……しばらく僕の手を放してくれなかったし、こんな調子の彼女をほっとくわけにもいかず、結局しずかちゃんとの久しぶりの再会は、ほんのわずかな時間しか叶わなかった。

「……さっきの人、誰?」

「え?」

「さっきショッピングモールにいた人!!誰!?」

「ええと……」

……そうか、出木杉か。確かにあいつ、かなりのイケメンになってたな。身長だって高いし。
この世の中、イケメンこそ、男の中でもっとも位の高い身分なのだ……

「……あいつは出木杉って奴で、大手の企業に勤めてて……」

「――そうじゃなくて!!」

そう叫ぶと、彼女はようやく足を止めた。そしてしばらく黙り込み、ゆっくりと振り返った。

「……あの女の人……誰よ……」

「……え?」

「」

即興で書いてんのか?
凄いな
のび太鈍感すぎwwww上条さんかよwwww
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